
──生活俳句の広がり
戦争と平和、恋と病と貧困と。
大きな歴史の転換期を女性の眼で十七字に刻む。
〔掲載俳人(明治40年から大正8年生まれ)〕
細見綾子、岡本差知子、殿村菟絲子、高野冨士子、
石橋秀野、池上不二子、田畑美穂女、加藤知世子、
栗林千津、清水径子、藤木清子、下村梅子、
中村苑子、文挾夫佐恵、中尾寿美子、桂 信子、
高木晴子、横山房子、石田あき子、北原志満子、
森田愛子、小坂順子、馬場移公子、鈴木しづ子、
上野章子
句集『桃は八重』より。
季語は「桃の花」で春。
俳句は普段着の文芸である、
と宣言したような歯切れのよい一句。
綾子は生涯この「普段着の文芸」を作句信条として、
女性の喜怒哀楽を率直に詠った。
〈鶏頭を三尺離れもの思ふ〉
〈冬来れば母の手織りの紺深し〉。
句文集『櫻濃く』より。
季語は「松の緑」で春。
秀野は評論家山本健吉と学生結婚。
戦後の貧困のなか、
あり余る才能を生かしきることなく、
結核のため38歳で死去。
〈西日照りいのち無惨にありにけり〉
〈病み呆(ほ)けて泣けば卯の花腐しかな〉。
句集『女身』より。
季語は「梅雨」で夏。
信子は結婚二年足らずで、夫と死別。
女身の哀歓を大胆に詠って褒貶をあびたが、
独自の句風を築き、九十歳の長寿を全うした。
〈死ぬことの怖くて吹きぬ春の笛〉
〈青空や花は咲くことのみ思ひ〉。
句集『虹帖』より。
季語は「虹」で夏。
愛子は越前三国の豪商と芸妓の娘として生まれた。
療養中に俳句を知り、高浜虚子に師事。
この句は29歳で亡くなった愛子が
死の三日前に電報で虚子に送ったもの。
愛子を詠んだ虚子の有名な二句をふまえている。
〈虹立ちて忽ち君のある如し〉
〈虹消えて忽ち君の無き如し〉。

●近世から現代まで、多様多彩な女性俳句を体系的にまとめた初めてのシリーズです
●鑑賞もまた創作、新たな「読み」に挑戦します
●全六巻150余名の女性俳句を第一線の俳人・歌人が斬新な視点で鑑賞します
●俳句鑑賞は句作上達の近道、作句も骨法を会得できます
●収録俳人の代表句100句を掲載。秀句選集を兼ねます
●「女性俳句年表」を付すなど、女性俳句史の研究に役立ちます
●月報には代表的な俳人・歌人・詩人等が、女性俳句の魅力について寄稿します
本書挿入の愛読者葉書にて未発表作品1句を記載し、ご投句ください。入選者は『俳句』に掲載し、記念品として掲載誌および角川学芸出版特製「俳句手帖」(非売品)を贈呈いたします。またアンケートにご回答いただいた方の中から抽選で1000名様に「俳句手帖」を差し上げます。
